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【オリンピズム】冷たい戦いを超えて(11) 西側に勝つための術に欠けている

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【オリンピズム】
冷たい戦いを超えて(11) 西側に勝つための術に欠けている

 《(52年の)ヘルシンキでの五輪初参加を控え、ソ連オリンピック委員会の会長はキエフ近くの陸上練習場からの報告で、マラソンや競歩の選手に特別な錠剤の補給や興奮剤の使用の許可を求められた。新しい錠剤のデータもすでにそろっていたようだ。祖国の勝利というプレッシャーから薬物の使用がすぐに機関決定された》

 ドーピングはソ連だけが発展させたわけではない。ソ連はヘルシンキ五輪に向けて、米国に勝つには練習方法や情報、文献が欠乏していると自ら批判し、西側に“スパイ”を送り込んでまでも情報収集に走った。「欧米に追いつき、追い越せ」と短期間で選手の養成を図る。ドーピングの責任の所在は“東西”を問わずとも、ソ連の五輪参加でドーピングは“冷戦五輪”に不可欠のものとなった。

 ロシアのスポーツ界を揺るがしているドーピング問題も源流はソ連にある。現代では、薬物を使用した意図や意識はなくとも、陽性となれば厳しい処分が待っている。平昌五輪ではロシア選手団が締め出された。だが、ドーピングの暗い歴史の大半はなお闇に包まれたままだ。

 モスクワ五輪の陸上女子400メートルで優勝し、その5年後、不滅の世界記録“47秒06”を打ち立てた東ドイツのマリタ・コッホは自らへの疑惑にこう語った。「自分には潔白を証明する手立てはありません。陽性になったことはないと繰り返すだけ。記録はいつか破られるものです」。果たして歴史は潔白を証明するだろうか。 =敬称略 (蔭山実)

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