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【日曜に書く】毎年見るのは去った時代への懐旧にすぎない そろそろ「紅白」卒業か 論説委員・鹿間孝一

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【日曜に書く】
毎年見るのは去った時代への懐旧にすぎない そろそろ「紅白」卒業か 論説委員・鹿間孝一

 紅白歌合戦ではエンディングに出演者がそろって「蛍の光」を合唱するのが恒例だが、この年は東京オリンピックを翌年に控えて、三波春夫さんの「東京五輪音頭」で締めくくった。

 作詞家の阿久悠さんは「歌は時代の妖怪である」と言った。「作家の手も歌手の手も離れて、風を起こし、雲を巻き上げる妖怪になるのである」

 「東京五輪音頭」もそうだが、確かに「歌は世につれ-」で、時代を映す、あるいは代弁するような歌があった。

 「レコード大賞も紅白歌合戦も年に一度、選ばれた妖怪としての歌や、非日常の芸を舞台で競うわけだから、茶の間にもその空気は伝染した筈(はず)である。だから、あれほど熱狂した」

 新語・流行語大賞に「忖度(そんたく)」と「インスタ映え」が選ばれた。世相を表す漢字一字は「北」だった。どちらもこの一年を振り返ると、なるほどと納得できる。だが、今年の歌は思い浮かばない。

 高倉健さん主演の映画「駅 STATION」が印象深い。大みそかにふらりと入った客のいない居酒屋で、女将の倍賞千恵子さんと、燗(かん)酒をやりとりする。テレビから紅白歌合戦で歌う八代亜紀さんの「舟歌」が流れる。肩を寄せる二人の孤独が浮き上がる。

 毎年、紅白歌合戦を見るのは、過ぎ去った時代への懐旧ではないだろうか。が、昭和の残像はとうに消えてしまった。今年の出場者の大半は名前も、歌も知らない。

 そういえば、「茶の間」も死語になった。(しかま こういち)

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