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【正論】北への軍事オプションはあるか 中国の動向、韓国の情報漏れ、イスラエル問題…  来夏までには動きが? 拓殖大学総長・森本敏

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【正論】
北への軍事オプションはあるか 中国の動向、韓国の情報漏れ、イスラエル問題…  来夏までには動きが? 拓殖大学総長・森本敏

拓殖大学の森本敏総長 拓殖大学の森本敏総長

 米国と北朝鮮の軍事衝突に関心が集まっているが、北朝鮮が誤算して米国を不用意に挑発しないかぎり、北朝鮮によって軍事衝突が引き起こされる可能性は低い。

 それは自国の崩壊につながることを北朝鮮が知っているからであろう。すると問題のカギはトランプ米大統領の決断になる。そこで、その決断を支える環境条件について考えてみたい。

 来夏までには何らかの決断を

 第1は米国の国内事情である。2018年11月には中間選挙がある。これは次期大統領選挙の前哨戦という意味もあり、政権にとっては最初の2年の成果が評価される選挙でもある。

 トランプ大統領は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)離脱、パリ協定離脱、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉、貿易不均衡是正など、公約実行に努力している。

 しかし、移民を防ぐ壁などに関する議会採決は先般のアラバマ州補選の敗北により行方は不透明である。共和党内の分裂も深刻だ。

 一方、「イスラム国」(IS)をイラク・シリアから掃討したあと、次の拠点となり得るアフガニスタン、ソマリア、リビアなどに米軍を増派してこれを阻止しようとしている。米国はまだ中東から手を引けず、北朝鮮との二正面作戦を進める余裕もない。

 しかし、中間選挙を迎えるに当たり、北朝鮮に対して何もできなかった大統領といわれたくない。北朝鮮が核兵器の小型化と弾道ミサイルの再突入技術に成功するのもあまり遠くとは思えず、来夏頃までに何らかの決断をしたい。

 第2は国内外で、北朝鮮との対話に転じるべきだという意見が広がっている。しかし、対話の前提として北朝鮮を核保有国として容認することはできない。核不拡散体制の崩壊につながり、北朝鮮が核をテロリストに手渡すかもしれず、北朝鮮の核を認めると韓国も核保有を言いだすからである。

 半島の核武装化や無条件の対話再開は容認できない。すると、このまま圧力をかけ続け、来春頃までに、経済制裁の効果として北朝鮮で国内混乱や避難民の流出が起こると、北朝鮮の挑発が本格化して、軍事オプションの可能性がくるかもしれない。

 尾を引くエルサレム「首都」問題

 第3は、しかし、軍事オプションの国際法上の根拠をどこに求めるかである。北朝鮮が核兵器搭載の弾道ミサイルを米国本土近くの公海上に向けて飛ばすなら、米国本土防衛のため個別的自衛権行使を理由に武力行使できそうだが、次の核実験が行われたり、ロフテッド軌道で弾道ミサイルの再突入実験に成功するだけでは、武力行使の根拠理由にはならない。

 第4は米国大使館のエルサレム移転準備を決定したあと、国際社会の反発が大きく、米国の武力行使に賛成する雰囲気はない。ロシア・中国は当然のこと、欧州諸国や中東・湾岸諸国の多くは反対で、アジアでも理解してくれそうな国は日本くらいである。これで武力行使を強行すると、今後、米国の対外政策が機能しなくなる可能性がある。

 第5は、この軍事作戦を成功させるためには中国との協調が不可欠であるが、なかなか難しい。米国の軍事行動に際して中国軍が北朝鮮を支援して介入してくると大戦争になる。それは米中とも回避したい。

 そこで中国と事前に相談して中国の国土・国益に損害を与えないことを保証するとしても、北朝鮮崩壊後に中国リードの朝鮮半島になることは容認しがたい。中国はかねて半島における軍事作戦には強く反対しており、中国への説得がうまくいく保証はない。ただ、ロシアは米国に対して何でも反対するので協議の必要はない。

 決断するのはトランプ大統領

 第6は、米国の軍事オプションに対する北朝鮮側の反撃と、それによる被害をいかにして最小限度にすることができるかである。

 作戦の成否は緒戦で北朝鮮による反撃の前に、作戦統制通信機能や非武装地帯(DMZ)前線に位置する長射程砲と弾道ミサイルに壊滅的打撃を与えることができるかどうかによる。この成果と非戦闘員退避の範囲と速度、および北の反撃能力の相対比で被害レベルが決まる。これを最小限にできるのか。韓国はかねて軍事作戦に反対なので、これがどのように作用するかも予断を許さない。事前に通報して情報が漏れるとむしろ、危険である。

 最低でもこれだけの要素を考慮すれば、軍事オプションの蓋然性は高くはないであろう。しかし、決断するのがトランプ大統領であることを忘れてはならない。われわれはいかなる事態に遭遇しようとも国家と国民の安全を確保するためにあらゆる備えを行い、半島の非核化を達成し、安定して繁栄する北東アジアを維持するために対応していくことが求められる。

 その間、わが国は戦後、初めて安全保障・防衛政策上の大きな試練を受けるであろうが、これを克服していかなければならないことはいうまでもない。(拓殖大学総長・森本敏 もりもとさとし)

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