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【オリンピズム】冷たい戦いを超えて(10)器械を超えた天才も少女に戻る

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【オリンピズム】
冷たい戦いを超えて(10)器械を超えた天才も少女に戻る

段違い平行棒で、手が滑り、バーから落ちる寸前のコマネチ。落下は優勝を狙うルーマニアに大きな打撃となった=1980年7月(UPI=共同) 段違い平行棒で、手が滑り、バーから落ちる寸前のコマネチ。落下は優勝を狙うルーマニアに大きな打撃となった=1980年7月(UPI=共同)

 国際体操連盟会長も割り込んで激論を交わす。いまふうにビデオ判定も持ち込む。結果は、総合得点でわずか0・075及ばず、コマネチは2位。一世を風靡(ふうび)した「コマネチ時代」は5年で幕を下ろすことになった。

 だが、わずかの差の根拠はよくわからないままだった。当時の産経新聞はモスクワ発の特派員電でこう報じている。

 《主観に左右されがちな体操競技は、地元の声援が審判に影響を与えるほか、体操王国ソ連の発言の強さがしばしば指摘されている。体操競技には…不明瞭な審判をめぐるトラブルが多い》

 もめている間、会場内は「ソ連、ソ連」の大合唱と手拍子がコマネチを圧倒した。

 《両手を腰に当てて立ち尽くした。視線を四方にやる。髪をかき上げる。鼻に手をやって涙ぐむ。ろう人形のように表情を変えない体操選手から、十八歳の多感な娘に戻ったようにみえた》

 モントリオール五輪で競技史上初となる10点満点を相次いでマーク。だが、いかに鍛え抜き、正確さとしなやかさで勝負しようとも、男子顔負けの大技を連発するダビドワには難度の差で及ばなかった。これが同じ18歳なのか。ソ連の強さをまざまざと見せつけられた決勝だった。

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