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【日曜に書く】天の時、地の利、人の和 論説委員・別府育郎

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【日曜に書く】
天の時、地の利、人の和 論説委員・別府育郎

 県陸協のスターター主任である福岡さんは、スターターの割り振り役でもある。自身の出番は100メートル決勝に決めた。素直に「撃ちたかった」からだ。

 朝から吹き流しの風を読み続け、一定の法則性をつかんだ。選手の背中を押す気持ちで「オン・ユア・マーク(位置について)」のオンにアクセントをつけたのは、いつも通り。

 風が強まる。「セット」。そして号砲。振り返ると選手はすでに80メートルあたりを駆け、50メートル付近の吹き流しは真下を向いていた。読みは当たった。桐生と、握手を交わした。

 「人の和」とは、「思い」の集合なのではないか。

 アシックス社は今季、市販品のスパイクをベースに「桐生モデル」を改良し、ピンの配置も変えた。山県や多田、サニブラウン・ハキーム(東京陸協)、ケンブリッジ飛鳥(ナイキ)、飯塚翔太(ミズノ)ら好敵手の活躍も力を与えた。

 そうした中で、桐生が先陣を切った。10秒足らずの、短くも壮大なドラマである。(べっぷ いくろう)

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