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【日曜に書く】天の時、地の利、人の和 論説委員・別府育郎

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【日曜に書く】
天の時、地の利、人の和 論説委員・別府育郎

 表面のウレタン部分を3ミリ削り、コーティングを施す。一律ではない。100メートルのスタート付近や、中長距離走者が酷使する内側レーンでは摩耗の度合いが激しい。不等沈下の表面を均一にするための微妙な削り加減は熟練の経験と勘による。

 競技場のデジタル化により、レーンの下には縦横に電気配管が通る。その影響を表面に、ランナーに与えてはならない。細心、最高の技術をトラックに込めた。だから、桐生の記録が誇らしかった。

歓喜の小さな輪

 スターターを務めた福岡渉さんは電光板の風速表示を見た。「1・8」。記録9秒98が確定する。自然と両手が挙がった。審判仲間が駆け寄ってきた。100メートル先ほどの大きなものではないが、小さな歓喜の輪ができた。「本当は、はしゃいではいけないんですけどね」

 北風が吹き続けていた。追い風である。スタートから10秒間の平均風速が2メートルを超えては記録が公認されない。この日、100メートル決勝までずっと「参考記録」のレースが続いていた。

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