産経ニュース

【日曜に書く】天の時、地の利、人の和 論説委員・別府育郎

ニュース コラム

記事詳細

更新

【日曜に書く】
天の時、地の利、人の和 論説委員・別府育郎

3ミリの削り

 辻広組(福井市)の専務、塚本純一さんは工事部係長の藤野敬博さんと福井県営競技場のスタンドでレースを見守った。会場は立ち見も出る超満員。直前に開催されたロンドン世界陸上の興奮を引きずり、記録への予感があったのかもしれない。

 もっとも大会ポスターの主役は、世界陸上100メートル代表の多田修平(関学大)だった。決勝レースも多田が先行し、桐生がこれを追って抜いた。電光板に「9・98」の記録が表示されると、会場は地響きのような大歓声と長い拍手に包まれた。

 駐車場まで約1キロの帰途、近所の人らに「何があったんですか」と聞かれた。それほどの歓声だった。「100メートルの日本記録が出ました。9秒台が出たんです」。説明を繰り返しながら、「トラックは私たちが造ったんです」とまでは言えなかった。言いたかったけれども。

 辻広組は昭和55年、県営競技場のトラックを全天候型に全面改修し、以降5年ごとの部分改修も手がけてきた。来年の福井国体を前に昨秋、再び全面改修を完成させたばかりだった。

続きを読む

「ニュース」のランキング