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【産経抄】ふるさとへふんどし一つみやげなり 12月1日

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【産経抄】
ふるさとへふんどし一つみやげなり 12月1日

 ドイツ文学者の高橋義孝さんが、横綱審議委員会委員長を務めていたころの話である。親しい親方衆とゴルフを楽しみ、終わって風呂に入ると、春日野理事長と中立親方の姿があった。春日野さんが背中を洗おうとすると、中立親方が背中を流し始めた。

 ▼春日野さんが辞退しても、中立親方は手を休めない。元横綱栃錦の春日野さんは、元横綱栃ノ海の中立親方の兄弟子と師匠にあたる。引退して親方になっても、その関係は続く。相撲界の「縦の社会」の美しい面を見た、と高橋さんはいう(『大相撲のすがた』)。

 ▼「先輩横綱として、弟弟子が礼儀と礼節がなっていないときに、それを直し、教えてあげるのが先輩としての義務だと思っています」。横綱日馬富士は一昨日の引退会見で、幕内貴ノ岩に暴行を加えた理由について語っていた。

 ▼残念ながらとても「縦社会」の美しい一面とはいえない。世間を騒がしたことについては頭を下げたものの、被害者への謝罪の言葉はなかった。事件の決着はまだついていない。日馬富士には法の裁きも待っている。

 ▼「ふるさとへふんどし一つみやげなり」。高橋さんの本で見つけた川柳である。夢が破れて相撲を廃業し、故郷に帰る若者の姿が目に浮かぶ。相撲界の頂点を極めた日馬富士の未来には、何が待っているのだろう。国籍はモンゴルのままで、親方になる道は閉ざされている。

 ▼「体がでかいから普通のことができない」。「大相撲の発展を求める議員連盟」で、力士についてこんな発言が出たという。もっとも、日馬富士は絵筆を執れば玄人はだし。横綱を務めながら法政大学の大学院に通い、母国の経済や教育について勉強してきた。何といっても、まだ33歳の若者なのである。

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