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【正論】『神曲』中国篇を書いてはどうか 真実が書かれ、非業の死を遂げた2600万余の霊が語り出し、自由と正義が行われる日を祈る 東京大学名誉教授・平川祐弘

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【正論】
『神曲』中国篇を書いてはどうか 真実が書かれ、非業の死を遂げた2600万余の霊が語り出し、自由と正義が行われる日を祈る 東京大学名誉教授・平川祐弘

東京大学名誉教授・平川祐弘氏 東京大学名誉教授・平川祐弘氏

 「人生の道の半ばで」私はダンテを訳した。若い時に古典を訳すと一生つきあうことになる、といわれたが、事実そうなった。86歳の私が目下刊行中の著作集にもダンテ講義が3冊入る。地獄・煉獄・天国から成る『神曲』だが、私はもっぱらインフェルノだけを論じた。インフェルノとはイタリア語で地獄篇をさすが、ではこの世界文学の大古典『神曲』との関連で次世代の人に私は何を望むか。

≪劉少奇の屈辱を彷彿させる≫

 フィレンツェの政治家ダンテは1302年、公金費消の件で、2年間の国外追放と罰金刑に処せられた。しかしダンテはその処分を不当とし出頭命令に応じない。そのため永久追放、もしフィレンツェの司直の手に落ちた場合は死刑とされた。こうして党内の権力闘争に敗れたダンテは国外で流浪の暮らしを余儀なくされ、祖国についに戻らずラヴェンナで1321年、客死する。

 その間、貧に窮したが、『神曲』創作に精魂を傾けた。それは政治的敗者ダンテの文筆による代償行為で、憤怒に燃えた詩人は、恨みをはらすべく、政敵法王ボニファチオ8世を地獄の第8の谷の第3の濠に落とし火に焼かせた。

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