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【オリンピズム】冷たい戦いを超えて(5)「参加しなければアフガンで起きていることを何も変えられない」

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【オリンピズム】
冷たい戦いを超えて(5)「参加しなければアフガンで起きていることを何も変えられない」

男子100メートル決勝のゴールの瞬間。アラン・ウェルズ(左端)がシルビオ・レオナルド(右端)を僅差で破った=1980年7月25日(UPI=共同) 男子100メートル決勝のゴールの瞬間。アラン・ウェルズ(左端)がシルビオ・レオナルド(右端)を僅差で破った=1980年7月25日(UPI=共同)

 「周囲から圧力はあったが、なんとか意識を整えられる程度に収まっていた。ゴールして大型スクリーンでリプレーを見た。かなりぼやけていても僅差で勝ったと思った。表彰式は五輪旗と五輪歌で行ったが、それが最低限できること。残念でも正当だ」

 ウェルズは200メートルでも金メダルを期待されたが、今度は僅差で敗れる。

 「勝っていたら大違いだっただろうが、決勝に残ることだけでも素晴らしいこと。メダルの色は関係ない。金メダルを一つ取っただけでも人生でこの上ないことだ」

 ただ、米国勢がいないことでレベルの低い戦いになったと感じる人は多かった。当時の産経新聞も共同通信電として、こう伝えている。

 《「世界一速い男」を決めるオリンピックの男子百メートル決勝。だが、モスクワ大会の勝者にその称号を与えることは妥当だろうか。(中略)西側主要国のボイコットにもかかわらず、高い水準をみせている今大会の陸上競技だが、男子百メートルだけは例外といわざるを得ない》

 金メダルを取っても歓迎されない。英政府の陰湿な圧力を振り払ってまで参加したウェルズには言いしれぬ悔しさだった。だが、問題はそこで終わらなかった。

 2012年ロンドン五輪。英BBCテレビは内部告発として、ウェルズがモスクワ五輪当時、薬物を使用していたとの疑惑を報じ、衝撃が走った。母国での五輪を目の前にして疑惑を完全に否定する金メダリスト。あれほどまでに苦労したモスクワは、どこまでも晴れなかった。=敬称略(蔭山実)

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