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【日曜に書く】「弱虫ぽー」が教えてくれた 論説委員・山上直子

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【日曜に書く】
「弱虫ぽー」が教えてくれた 論説委員・山上直子

 次に、帯のコピーを書いて推薦したのが、コピーライターの糸井重里さん。さらに糸井さんや深谷さんがツイッターに投稿すると、シンガー・ソングライターの矢野顕子さんがリツイートするなど、一気に拡散していった。

動物の被災は続いている

 先日、京都・立命館大学でのワークショップに参加した太田さんにお会いした。付き合いは東日本大震災の後からで、最初は、震災直後に現地に入り動物たちの惨状を撮影した写真集の取材だった。「のこされた動物たち 福島第一原発20キロ圏内の記録」である。太田さんを見て人恋しそうに寄ってくるガリガリの犬、痩せ衰えたネコ、折り重なるようにして餓死した牛たち…。人間がいなくなった町で次々と息絶えていく動物たちの姿が克明に記録されていた。

 その後、太田さんはボランティアで被災地のネコの餌やり活動を始め、現在も1人で帰還困難区域も含め被災地に通い続けている。かつて人に飼われていたネコの子孫たちが細々と命をつないでいるからだ。「できることをやるという気持ちでやってきました」という太田さん。「目の前にいる動物たちを救いたい。なぜならイヌやネコは本来、野生ではないからです。彼らの被災はまだ続いている」。給餌箱を設置して定期的に通うが、イノシシやアライグマなど野生動物との戦いだという。

 もう一つ、戦っているのが人間の「無関心」だ。実はぽーの物語がさまざまな人の琴線に触れたのも、たかがネコの話と片付けられない「いじめ」問題があり、「世間の無関心」という根本的な問題を内包しているからではないか。

 3・11から6年8カ月が過ぎた。忘れるわけにはいかない、そしてずっと無関心であってはならないと、改めて思う。(やまがみ なおこ)

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