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【日曜に書く】「弱虫ぽー」が教えてくれた 論説委員・山上直子

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【日曜に書く】
「弱虫ぽー」が教えてくれた 論説委員・山上直子

 彼はいつも仲間にいじめられていた。からだは大きいのに、気が弱くてけんかはからっきしダメ。そもそも戦う気もあまりないらしかった。よくいえば穏やかな性格だが、いわゆる“弱虫”である。

 食事のときも遠慮がちで、いつも席を譲って自分の番が来るのを待っている。殴られても脅されても争わず、怖くてたまらないときにだけ、たまに小さい声で抗議するが、それでまたいじめっ子に追いかけられてしまう。毛をむしられてけがをすることもあった。

 だから友達も少ない。見た目もパッとせず、いつも傷ついて薄汚れていたからだろうか。公園の隅で1人、ぽつんと座っているのが常だった。

家族に迎えられ

 あるとき、そんな彼をふびんに思った近所のカメラマン夫婦が気にかけてくれるようになり、数年後に、家族に迎え入れてくれた。ほっとしたのもつかの間、気の強い姉妹たちがいて、今度は家庭内でもいじめられる。

 それでも彼はいじけず恨まず、マイペースを貫いた。時折、両親が預かる小さな子供たちの世話も、進んで引き受けるやさしいお兄ちゃんだった。家族になじむ努力を続けるうちに、姉妹たちも彼のやさしさを理解し、受け入れてくれるようになったのである。

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