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【産経抄】後妻業のビジネスチャンスは増えるばかり 11月8日

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【産経抄】
後妻業のビジネスチャンスは増えるばかり 11月8日

判決を聞く筧千佐子被告(イラストと構成・田村角) 判決を聞く筧千佐子被告(イラストと構成・田村角)

 「ミステリーの女王」アガサ・クリスティの作品には、頻繁に毒物が登場する。しかもその記述はきわめて正確である。病理学者が、実際に起きた事件の際に、作品を参考にしたほどだ。

 ▼実はクリスティは第一次大戦中、英国南部の病院でボランティアの看護師をしていた。そのとき薬剤師の助手を務めながら、薬品の勉強をしていたという。連続青酸死事件で昨日、京都地裁で死刑判決を受けた筧千佐子被告(70)は、どこで知識を仕入れたのだろう。

 ▼裁判長は、男性3人の殺人、1人の強盗殺人未遂の4件全てについて、青酸化合物を使った被告の犯行と認めた。ただ、青酸化合物の扱いは難しい。味が苦く、飲ませようとしてもすぐ吐き出してしまう。しかも空気中にさらすと、すぐに毒性が失われる。

 ▼筧被告の最初の夫が平成6年に病死して以降、結婚、交際していた男性約10人が死亡している。この間に10億円規模の遺産を手にしたとされる。捜査関係者が「まるで小説みたいや」とつぶやいたそうだ。そんな謎だらけの人生で、毒物の知識が悪用された。

 ▼資産家の高齢者と結婚、死別を繰り返し、多額の財産を奪っていく。直木賞作家、黒川博行さんの小説『後妻業』の主人公である。まるで筧被告をモデルにしたかのような作品だが、事件が発覚する前に、文芸誌で連載が始まった。黒川さんによると、知人の姉妹から聞いた話が基になっている。

 ▼姉妹の父親は結婚相談所で知り合った女性と交際するようになった。その父親が亡くなると、女性は1億円もの財産を受け取っていた。独居高齢者の増加に伴い、後妻業の“ビジネスチャンス”は、そこかしこにころがっている。連続青酸死事件は、氷山の一角かもしれない。

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