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【正論】米国の「ユネスコ脱退」看過するな 文化の力は激化するリアリズムを抑制できる 元文化庁長官・近藤誠一 

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【正論】
米国の「ユネスコ脱退」看過するな 文化の力は激化するリアリズムを抑制できる 元文化庁長官・近藤誠一 

元文化庁長官・近藤誠一(伴龍二撮影) 元文化庁長官・近藤誠一(伴龍二撮影)

 米国のユネスコ(国連教育科学文化機関)脱退表明を「またか」で済ませてはならない。国際関係の長期的うねりの中で捉えねばならない。

 国際関係には左右に振れる要素と、一直線に進む要素が混在している。国際政治のリアリズム(現実主義)とアイデアリズム(理想主義)の間の「振れ」は前者の好例である。戦争と国際協調は交互に繰り返されてきた。勝者がつくる戦後の秩序は、やがて敗者の挑戦を受けて新たな戦争へと進む。

≪国連の理想崩す危険な振り子≫

 後者の例は科学技術の進歩やグローバル化である。これらは不可逆的に進む。今世界の振り子は、戦後の国連中心のアイデアリズムから急速にリアリズムに向かっている。そしてIT(情報技術)などの不可逆的進展が、この「振れ」をより強く、より速く、そしてより危険なものにしている。

 人類社会にはもっと大きなうねりがある。理性(理念)中心主義と感情(感性)中心主義の間の「振れ」だ。古代ギリシャはアリストテレスに代表される理性の時代だった。やがてヨーロッパは中世に入り教会支配下の宗教・魔術の時代に移行した。啓蒙(けいもう)の時代が理性を再発見した。合理主義が生まれ、科学技術革命を経てリベラル・デモクラシー(自由・民主主義)を中核とする近代となった。

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