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【日曜に書く】漫画で読む古典もあなどれない 論説委員・清湖口敏

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【日曜に書く】
漫画で読む古典もあなどれない 論説委員・清湖口敏

 私は『少年』や『ぼくら』『少年サンデー』といった漫画雑誌に夢中になった世代だから決して漫画嫌いではないのだが、古典を漫画でというのにはさすがに抵抗を覚える。

 ◆「食わず嫌いだ」

 新明解国語辞典も言う。「寝ころがって漫画本を見たり電車の中で週刊誌を読んだりすることは、勝義の読書には含まれない」と。寝ころがるかどうかはともかく、文学を漫画でというのは少なくとも私の読書作法にはなじまないのだった。

 「それを食わず嫌いというのだ」。知人のこの一言に、ならばと手に取ったのが『まんがで読破 おくのほそ道』(イースト・プレス刊)である。読んで驚いた。漫画といってばかにできないどころか、その作りたるや実に丁寧なのである。難語には「紙子…防寒用の渋紙製の着物」というふうに解説を付けている。一般の通釈本などに見られる頭注や脚注と同じだ。

 それだけではない。『おくのほそ道』の原文は、「その日やうやう草加といふ宿(しゅく)にたどり着きにけり」の後、ごく短い文を挟んで「室(むろ)の八島(やしま)に詣(けい)す」と出てくる。しかし漫画では、草加の月を眺めつつ芭蕉が懐旧に浸るシーンが登場し、伊賀上野出身の芭蕉がなぜ江戸に下向し俳諧の道を決断したかなど、人物像の理解を助ける見事な仕掛けが用意されていた。これなら古典文学との距離も一気に縮まろうというものである。

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