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【イタリア便り】命懸けの美術鑑賞

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【イタリア便り】
命懸けの美術鑑賞

 先月中旬、重要美術品やイタリアの偉人たちの墳墓が並ぶ中部フィレンツェのサンタ・クローチェ大寺院で、高さ30メートルの天井からはりを支える柱頭の一部が突然落下し、直撃を受けたスペイン人観光客が死亡した。

 イタリアの大寺院は大部分が建築から数百年が経過し、老朽化が進む。観光ブームに伴う多数の来館者の吐く息と体温による湿度も悪影響を与えている。国の美術監督局は重要文化財の保存と修復に全力を挙げており、今回の落下部分も7日前に点検したときは異常なしだったという。

 サンタ・クローチェは、イタリアを愛したフランス人作家、スタンダールのエピソードでも有名だ。1817年、彼はこの寺院のジオットの壁画を鑑賞中、充足感とともに突然の目まいに襲われ、卒倒したという。

 こうした症状はスタンダール以外の観光客にも時折見られ、後年「スタンダール症候群」の症状名が付けられた。原因は不明だが、長時間高いところにある壁画などを首を反らせて眺めていると首の血管が圧迫され、脳への血流が塞がれるためだという仮説も立てられている。

 美術愛好家は長時間、天井や壁画などを眺める。「スタンダール症候群」以外に、壁の落下などにも注意しなければならないとなると、美術鑑賞も命懸けである。(坂本鉄男)

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