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【オリンピズム】冷たい戦いを超えて(3)五輪では思うままに走らない

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【オリンピズム】
冷たい戦いを超えて(3)五輪では思うままに走らない

 「前夜はまったく眠れず、横になっても心臓の鼓動が気になった。昼食でオレンジジュースをひっくり返したり、コーヒーにクリームの箱を落としたり。いつもはレースの数分前に集中して周囲を遮断するが、この日はまだ45分も前にそうなった」

 控室。支給された上着がすり切れていた。世界記録を破ったときの縁起物を取り出してゼッケン「254」を付け替える。しかし、効果はなかった。「スタートが鈍く、手応えがなかった。最下位でも慌てなかったのは、まだ先頭が固まっていたからだ」

 8人の選手が途中から幅3メートルの間をほぼ全力で走り、優位な場所を争う800メートル。妨害は許されず、頼りは戦術だけといっていい。仕掛けるところで動かず、無意識のまま走る。「五輪の決勝でそれをやってはいけないと悟った」

 英政府の意向に反してまで臨んだ五輪。表彰式では金メダルのオベットを祝い、参加の条件として英国オリンピック協会(BOA)が決めた五輪旗が掲揚され、五輪歌が流れた。「1500メートルに向けて余計な重荷を背負うことになった」。コーは図らずもモスクワの闇に紛れることがうれしかった。(蔭山実)

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