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【産経抄】子規が愛した神の食べ物 10月26日

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【産経抄】
子規が愛した神の食べ物 10月26日

 正岡子規は酒を飲まなかった。旅行に出かけても費用がかからないはずだが、そうはいかない。時々茶店で、好物の果物を楽しむからだ。なにしろ大食漢である。「大きな梨ならば六つか七つ、樽(たる)柿ならば七つか八つ、蜜柑(みかん)ならば十五か二十位食うのが常習であった」と随筆に書いている。

 ▼明治28年の秋に奈良を訪れたときも、宿屋で夕食をすましてから、柿を所望した。皮をむいてくれるのは、「梅の精霊」のような美しい下女である。みとれながら食べていると、ボーンと釣り鐘の音が聞こえた。どこの鐘だと聞くと、彼女は障子を開けて東大寺を見せてくれた。

 ▼「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」。あまりにも有名な句は、このとき着想を得た、との説もある。とはいえやはり、子規が法隆寺の門前で、柿をかじりながら詠んだと思いたい。本日は「柿の日」である。子規が奈良入りした日にちなんで、全国果樹研究連合会のカキ部会が、平成17年に制定した。

 ▼柿は奈良時代に中国から渡来したとみられる。日本の土地柄に合っていたのか、全国で栽培が広がり、品種改良が進んだ。学名は、「ディオスピロス(神の食べ物)・カキ」である。江戸時代に来日したスウェーデンの植物学者ツンベルクが、美味と栄養価の高さに驚いて名付け、ヨーロッパに広めた。

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