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【国語逍遥(90)】存亡の危機 現実の「息づかい」が見える 清湖口敏

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【国語逍遥(90)】
存亡の危機 現実の「息づかい」が見える 清湖口敏

 「このあたりの文章からは、太陽の光と人間と馬の汗とが感じられる、そんなものは少しも書いてないが」-『平家物語』と題する小林秀雄の評論は、「平家物語の美しさ」に対する小林の感動を通じて私たちに、「息づかい」の見える文章とはどういうものかを直截(ちょくせつ)簡明に教えてくれる。

 今年もまた「国語に関する世論調査」(平成28年度、文化庁実施)の結果が公表された。メディアが大きく報じるたびに「僕はこの言葉を誤りとも知らずに使ってきたのか…」といった声が巷(ちまた)にあふれる。世間にはどうやら言葉の正誤を必要以上に峻別(しゅんべつ)したがる人が少なくないようだ。

 例えば「存亡の危機」である。今回の調査では「存続するか滅亡するかの重大な局面」について「存亡の機」を使うか、「存亡の危機」を使うかと尋ねている。結果はグラフに見る通り、「存亡の機」を使うと答えた人がわずか6・6%だったのに対し、「存亡の危機」を使う人は83%にも上った。年齢層による違いはほとんどない。

 文化庁の報告は「存亡の機」を「本来の言い方」と示しただけで、これを正しいとも言っていなければ、「存亡の危機」が誤りだとも言っていない。しかし少なくとも私の周囲では、「存亡の危機」を誤用と受け止める向きが圧倒的に多かったのである。

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