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【産経抄】死なないで 逃げるは恥かもしれないけれど共感を呼んでいる 9月3日

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【産経抄】
死なないで 逃げるは恥かもしれないけれど共感を呼んでいる 9月3日

 人と人の関係には足し算型と掛け算型がある。先月永眠した気象エッセイストの倉嶋厚さんが自著にそう書き留めていた。妻の泰子さんとは「1×1」の掛け算型夫婦だったという。自立した2人が暮らす「1+1」ではなく一心同体だった、と。

 ▼足し算型なら、一方が欠けても「1」が残る。掛け算型は〈一人が「0」になるとすべてが「0」になってしまいます〉(『やまない雨はない』文芸春秋)。病で妻に先立たれた倉嶋さんはうつ病を患った。自殺の誘惑に何度も負けそうになったと打ち明けている。

 ▼新学期の始まる9月1日前後に自ら命を絶つ子供が多い、との内閣府調査が示されたのは2年前である。この夏も、悲しいニュースに何度か触れた。人間関係やいじめを苦にする子供にとって、死の衝動に突き動かされやすい季節であることは理解できなくもない。

 ▼掛け算型の間柄は、夫婦にかぎるまい。親子も、兄弟姉妹も同じだろう。「×1」の相手が失われることで、世界が「0」になる人は必ずいる。思い悩む子供たちに伝えたい。最後の一線を越える前に、喪失感に嘆き悲しむ人たちの顔を思い浮かべてはくれないか。

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