産経ニュース

【国語逍遥(88)】絵解き 伝統の「語り芸」に酔った 清湖口敏

ニュース コラム

記事詳細

更新

【国語逍遥(88)】
絵解き 伝統の「語り芸」に酔った 清湖口敏

 世の無常を観じて筑前国(福岡県)の所領も、身重の妻、子も捨てて出家した父(苅萱道心)。後に生まれた石童丸は13歳の春、父恋しさに母とともに旅立ち、父を尋ね歩く。やがて高野山の麓まで来たものの、高野山は女人禁制。石童丸は母を麓の宿に残し、ひとり山に入っていく。

 奥の院の無明の橋で一人の僧と出会う。この僧こそ父道心なのだが、石童丸は父の顔を知らない。一方、目の前の石童丸をわが子と知った道心は涙で頬をぬらす。「お目に涙が…。もしや私の父上さまでは…」。父ではないかと必死に迫る石童丸。しかし道心は仏道修行の身のゆえ父とは名乗れず、そなたの父は去年亡くなったと教える。涙ながらに山を下りた石童丸を待っていたのは、息を引き取ったばかりの母だった。

 悲しみに暮れて帰郷すると、姉もまた、この世の人ではなくなっていた。天涯孤独となった石童丸は再び高野山へ。道心を師に修行すること34年。しかし父子が一堂にあっては何かと障りも多く、道心は善光寺如来のお告げと言って信濃の善光寺に旅立ち、当地で往生する。道心の往生を悟った石童丸は、早速信濃に赴き念仏に励む。そして道心の死から2年後の同じ8月24日、とうとう親子の名乗りを交わさぬままに石童丸も亡くなる…。

続きを読む

「ニュース」のランキング