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【正論・戦後72年に思う】SNS普及、ゲーム… 活字の情報媒体の崩壊で戦前から涵養した「知的中層社会」は崩壊の危機にある  評論家・山崎正和

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【正論・戦後72年に思う】
SNS普及、ゲーム… 活字の情報媒体の崩壊で戦前から涵養した「知的中層社会」は崩壊の危機にある  評論家・山崎正和

 ≪断絶を避け抜いた情報文化≫

 昭和20(1945)年、敗戦が玉音放送によって訪れたことは、象徴的であった。戦災の阿鼻(あび)叫喚のなかで、ラジオ放送は一日の中断もなく続けられたのである。それをいえば新聞も自発的には休刊をせず、学校も制度的には休校期間を設けなかった。日本の情報文化は、戦前から戦中にかけて甚大な被害を受け、過ちを犯しながらも、ともかくも敗戦による断絶を不思議に避け抜いたのであった。

 それだけではなく戦後1年もすると、廃虚の町には本が溢(あふ)れ始めた。生活に困った知恵人が蔵書を闇市に流したせいもあったが、焼け残った出版社が新刊や在庫本を世に出したのである。戦時中に弾圧された総合雑誌の復刊も早かったし、新雑誌創刊も盛んで、読者も飢えたように活字に群がった。

 私は満州からの引き揚げ者だから、敗戦直後を直接には知らないが、帰国後に感じた日本人の情報文化への愛着はたくましさを極めていた。たとえば映画だが、これも復興数年もすると完全に生気を取り戻していた。戦前に輸入され、戦中は隠匿されていたフランス映画が解禁され、私は京都の名画座で終日その数本に見入ったことを覚えている。

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