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【別府育郎のスポーツ茶論】9秒台と民族のロマン 桐生や多田に思いを託しても悪くはあるまい

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【別府育郎のスポーツ茶論】
9秒台と民族のロマン 桐生や多田に思いを託しても悪くはあるまい

男子400メートルリレー予選で3走の桐生(右)からバトンを受けスタートするケンブリッジ=ロンドン(共同) 男子400メートルリレー予選で3走の桐生(右)からバトンを受けスタートするケンブリッジ=ロンドン(共同)

 だが、「体の小さな日本人が世界新記録で走ったと世界は信用してくれるだろうか」と、自虐的な謀議の末に記録は世界タイに据え置かれた。幻の世界記録伝説である。

 吉岡はその後、ロケットスタートの飯島秀雄を育てて東京、メキシコ両五輪に挑んだが、決勝進出は果たせなかった。

 末続は走法に日本古来の「なんば走り」の特長を取り入れた。ロンドン世界陸上の準決勝で、60メートルまでボルトに先行した多田修平がこれを継承する。

 サニブラウンが9秒台で走ったときには、称賛を惜しまない。ケンブリッジの場合も同様である。

 ただそれでは甲子園の審判員の逡巡(しゅんじゅん)を打ち消したとはいえない。恵まれない体格でも努力と工夫で世界に迫った先人の系譜の延長上にあるとは言い難い。

 原始競技である100メートル走で「小さな日本人だってやればできるのだ」と胸を張ってみたいのは、いわば民族のロマンである。桐生や多田にその思いを託しても、悪くはあるまい。

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