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【日曜に書く】広島をどう描くのだろう 論説委員・佐野慎輔

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【日曜に書く】
広島をどう描くのだろう 論説委員・佐野慎輔

 また今年も、「広島の日」が巡ってきた。

 ◆祈りをささげる日

 その昔、野球記者をしていたころ、広島に出張すると、一日は平和記念公園を歩いた。

 原爆ドームの空を見上げ、丹下健三デザインの平和記念資料館では言葉もなく立ち尽くす。少し重たくなった心を元安川の風が癒やしてくれ、ようやく電車通りを渡って、広島市民球場に歩みを進めるのだった。

 義父は、原爆死没者名簿にその名が記載されている。

 埼玉県生まれの埼玉県育ち。若い一時期、ほんの少しだけ広島に滞在した。そのとき、「あの日」に遭遇した。

 翌日、軍務によって広島市内に派遣され、被爆された方々の救護にあたった。

 義父から直接、当時の様子を聞いたことはない。娘に語り聞かせた阿鼻(あび)叫喚のさまを、「兵隊さん、水をくれ」と、か細く訴える被爆者の声がいまも耳に残っているという話を、また聞きしたにすぎない。

 義父の死後、埼玉県在住者では数少ない被爆2世で被爆者手帳を持つ妻とともに広島市役所を訪れ、名簿記載を申請した。帰途、平和記念公園を歩くと、それまでと違う思いがした。

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