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【産経抄】お嬢さん放浪記 7月25日

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【産経抄】
お嬢さん放浪記 7月25日

死去した犬養道子さん 死去した犬養道子さん

 昨日に続いて、結核で療養生活を送った著名人を紹介しよう。96歳の天寿を全うした評論家の犬養道子さんである。昭和23年に米国留学を果たし、1年後その姿はカリフォルニア州のサナトリウムにあった。

 ▼異国で闘病する若い女性を励まそうと、見知らぬ人々が毎日見舞いに来る。その一人だった海軍士官から、耳よりの話を聞いた。古くなったパラシュートのヒモの処理に困っているというのだ。犬養さんは、ヒモでベルトを作ることを思いついた。

 ▼部屋に並べていると飛ぶように売れ、欲しかったラジオが買えた。3年後、健康を取り戻した犬養さんは、欧州へ旅立った。10年間の渡航生活をまとめた『お嬢さん放浪記』はベストセラーとなる。

 ▼その後も「放浪」は続き、好んで外国生活を送ってきた。昭和54年にタイのカンボジア難民キャンプを訪れてからは、難民支援がライフワークとなる。世界各地の紛争地を飛び回り、難民の子供たちが自立する方法を考え続けた。その結論が、61年に設立した「犬養道子基金」である。

 ▼ある日、ローマを歩いていたら、ハンサムな青年が「ミチコー」と叫んでいる。ボスニアからクロアチアまでたった一人で逃れてきた少年だった。立派に成長した姿に、報われた思いがしたという。「日本にいると自分自身のことを偽善と思ってしまう。難民キャンプに行くとハッピーになる」とも語っている。

 ▼祖父の犬養毅首相が凶弾に倒れたのは、11歳のときだった。敬虔(けいけん)なクリスチャンとなったのも、五・一五事件と無関係ではない。聖書を支えにして、犬養家の「お嬢さん」としての矜恃(きょうじ)を保った。「ノブレス・オブリージュ(恵まれた者こそ率先して苦役に)」。この言葉を体現した人生である。

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