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【風を読む】時代と闘った教育者・天野貞祐 論説副委員長・沢辺隆雄

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【風を読む】
時代と闘った教育者・天野貞祐 論説副委員長・沢辺隆雄

 親孝行や信義など普遍的な徳目を教えるにも「価値観の押し付け」といった批判が根強い。最近の教育勅語をめぐる論議でも浮き彫りになったことだ。

 そうした戦後教育を考える上で、一人の教育者を描いた『天野貞祐-道理を信じ、道理に生きる』(貝塚茂樹・武蔵野大教授著、ミネルヴァ書房)はおもしろく、示唆に富む。

 平成生まれが増え、天野貞祐(1884~1980年)と聞いてすぐ分かる人は少ないかもしれない。哲学者、教育者として京都帝大教授や旧制一高校長などを歴任した。戦後は当時の吉田茂首相に請われ、昭和25年から文部大臣を務めた。

 天野貞祐は、その業績も多いが、目指した教育改革が実らなかった「挫折」の方が知られているかもしれない。

 挫折の一つは文相のとき、「国民実践要領」を発出しようとしたが実現しなかった。

 これは昭和26年のサンフランシスコ平和条約批准を機会に、「真に自主独立の精神を持って道徳的に生きていく目標を示したい」と目指した。内容は個人、家、社会、国家の各項目で、人格の尊厳や自由、責任、公徳心など徳目を示したが、当時の言論界、教育界から猛反発にあい、断念した。

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