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【産経抄】ワトスンもひどい目に遭った 6月2日

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【産経抄】
ワトスンもひどい目に遭った 6月2日

カブールの爆発であがる煙(ロイター) カブールの爆発であがる煙(ロイター)

 名探偵シャーロック・ホームズの相棒、ワトスン博士は軍医だった。1878年に始まった、大英帝国とアフガニスタンの2度目の戦争に従軍している。激戦のさなか肩を撃たれ敵兵に捕まる直前、部下に助けられた。

 ▼ロンドンの病院でワトスン博士と出会ったホームズは、一目で「アフガン帰り」を見抜く。「イギリスの軍医が塗炭の苦しみをなめ、腕に怪我(けが)まで負うような熱帯地方とはいったいどこか? アフガニスタン以外にはない」(『緋色(ひいろ)の研究』コナン・ドイル著、角川文庫)。

 ▼熱帯かどうかはともかく、アフガンでは今もたくさんの人たちが、「塗炭の苦しみ」にあえいでいる。首都カブールで先月31日に起きた自動車爆弾による自爆テロは、女性や子供を含む少なくとも90人が死亡する大惨事となった。現場は、各国大使館や政府機関が集まる地域である。日本大使館の窓ガラスも割れ、日本人職員2人が軽いケガを負った。

 ▼ワトスン博士が駆り出された戦争は、大英帝国が帝政ロシアとアフガンの覇権を争う過程で起きた。地政学上の要衝をめぐる両者の攻防は、チェスに見立てた「グレート・ゲーム」という言葉を生んだ。

 ▼1979年に軍事介入に踏み切ったのは、ソ連だった。2001年には、米中枢同時テロへの報復として米軍が空爆を始める。プレーヤーは入れ替わっても、ゲームは続いてきた。現在は米軍主体のNATO軍が、アフガン治安部隊を支援している。

 ▼もっとも政府の支配が及ぶのは、国土の約6割にすぎない。反政府勢力タリバンや過激組織「イスラム国」(IS)が、わが物顔でテロを繰り返す。昨年1年間で、民間人の死傷者は1万人を超えた。流血のゲームを終わらせる手立てはないものか。

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