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【蔭山実のスポーツ茶論】新時代を運ぶ薫風 東京六大学野球100周年へ驚くアイデア続々

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【蔭山実のスポーツ茶論】
新時代を運ぶ薫風 東京六大学野球100周年へ驚くアイデア続々

 「ちょっと、応援席の方にいます」。これまでになく激戦が続いた神宮球場。東京六大学野球の春季リーグ戦で母校を応援しよう、と先輩に誘われ、内野席を確保したところが、そんな答えが返ってきた。

 応援といっても、その日は母校の試合はなく、母校と優勝を争うチーム同士の戦い。この先、母校が優位になる結果を期待しての観戦だった。要は「昨日の敵」を応援するのだが、それにしても他校応援席の近くまでいくとは熱心だ。

 試合校以外のOBが神宮球場で観戦することには実は意味がある。今年で92年を迎えた東京六大学野球。学生野球の華として人気を博し、日本を率いる人材の輩出にも貢献してきたが、かつての江川卓投手(法大)の時代以降、人気は低迷に転じ、観客増が課題になっているからだ。

 学生の応援席に一般のファンも入れるようになって2年。すでに定着しつつあり、ネット裏で知り合いのOBを見かけることも少し減った気がする。ある先輩は「応援席はいい発散になるよ」と、いつも学生と一緒に応援しているという。

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 しかし、一番の問題は、神宮球場に足を運ぶ現役の学生の数が減っていることだ。学生にとって遊びの場であり、学びの場でもあった神宮球場。それを現代によみがえらそうと、さまざまな対策が始まっている。

 まずは野球を見る楽しみから。「打者のヘッドショット(顔写真)が毎打席、センターの電光掲示板に映し出されます」。米大リーグやプロ野球では当たり前のことだが、この春季リーグ戦から始まった。

 六大学野球を見ていて常々感じていたのが、選手のことがよくわからないということだった。取材する立場にあっても全選手を間近に知ることは難しい。

 甲子園で活躍した選手らが敵味方に分かれて戦うこともあれば、まったくの無名から頭角を現す選手もいる。その場で選手の顔と名前、経歴が一致すれば、一つ一つの勝負もさらに興味が増すというものだ。

 もう一つ、昨年から第4週以降は電光掲示板に各打者の打率が表示されるようになった。リーグ戦終盤の首位打者争いで一喜一憂しながら電光掲示板を見るのも新しい楽しみだろう。

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 2週に1度、法政大学の市ケ谷キャンパス(東京・富士見)の教室に夕方、学生が集まってくる。今年度で2回目を迎えた「東京六大学ゼミナール」だ。東京六大学の野球部以外の3年生を対象に、OBらを講師に招いて、現役の学生が六大学野球の活性策を立案し、実践していく。

 この春季リーグ戦は昨年度の1回目のゼミで企画された活性策が実践されている。オリジナルTシャツでの応援と試合後のグラウンド入場、応援する大学のユニホームを着て等身大の選手のパネルと写真撮影-。神宮球場に足を運ぶと、これまでにはなかった若々しい光景に目をひかれる。

 風薫る5月は「大学野球の季節」。高校野球、社会人野球、プロ野球よりも話題は豊富だ。今季はとくに期待の1年生の活躍が目立った。下級生による新人戦も「フレッシュ・リーグ」と名称も新たに、初めて総当たり戦で行われた。

 選手の育成、ファンの拡大。それを率いるOBの意識改革と学生の柔軟な思考。2025年の六大学野球100周年に向け、まだまだあっと驚くアイデアが控えている。新時代を運ぶ薫風が吹き始めた。

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