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【ん!?】荒々しい自然は居住地のすぐそばまで迫っている

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【ん!?】
荒々しい自然は居住地のすぐそばまで迫っている

 「山の神はもう軒下まで来ていますよ」。自然界の報道写真家、宮崎学さん(67)の言葉だ。人間の暮らす世界と野生動物の世界が重なり始めているというのだ。コンクリートに囲まれた都会暮らしではなかなか実感しにくいことではある。

 でも自作のセンサー付き自動カメラで野生動物を撮影してきた宮崎さんの写真展「ヒトの傍らで シナントロープから見た世界」を新宿でみて、あぁなるほどと思わされた。最新作は福島県の帰還困難区域で撮影されたシリーズ。避難者に自宅の記録を依頼されて通ったという。放置された家にネズミやテン、アライグマ、イノシシなどが頻繁に出入りしている様子を捉えている。人の姿が消えたとたんに、野生動物はすぐにその場所を占拠する。「避難地域が動物の天国になるだろうと思ってはいましたが、変化の早さは予想以上だった」そうだ。

 今回の展示でハッとさせられたのは、同じ場所で人間と鳥獣が両方写っている写真。カメラは通りかかるものを自動的に記録する。昼は人間、夜は野生動物。同じように行き来する。私たちに、獣たちと場所を共有している自覚がないだけなのだ。

 宮崎さんによると、木材を燃料としていた時代と比べると、人々が活用する山林面積は減った。放置される山は増えて、狩猟人口も減少、緩衝地帯を失って、荒々しい自然は居住地のすぐそばまで迫っている。

 山登りとか考えたらわかりやすいけど、自然に踏み入るには覚悟がいるもの。装備だってちゃんと考える。でも“境界線”は、思ってるよりずっと手前にあったりするのかも。

 残念ながら東京展は終了したが、大阪ニコンサロンでも6月22~28日に展示されるので、お近くの方はどうぞ。かなりおすすめです。(篠原知存)

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