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【産経抄】「知的生活」の余裕ない教師 5月1日

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【産経抄】
「知的生活」の余裕ない教師 5月1日

 先日、故渡部昇一さんを学者の道へ導いた恩師についてコラムを書いた。旧制中学で英語を習った佐藤順太先生である。そのお孫さんから連絡をいただいた。

 ▼渡部少年にとって憧れだった、先生の蔵書はまだ一部残っているという。先生の息子の恒夫さんは、地元の国立高専で電気工学を講じる教授となった。帰宅すると父親と同じように、書斎で古文書をひもといたり、漢詩をそらんじたりしていた。

 ▼今の学校の先生には、そんな「知的生活」を送る余裕はなさそうだ。日本の教員の労働時間の長さは、世界でも突出している。文部科学省が公表した勤務実態調査によると、小学校の教諭の33%、中学校では57%が、1カ月当たりの残業時間が80時間を超えていた。「過労死ライン」を上回っていることになる。

 ▼なかでも多忙をきわめているのが、小中学校ともに副校長、教頭である。教頭といえば、テレビの学園ドラマではしばしば「悪役」として描かれる。実際は、調査報告書の作成から、休んだ教諭のフォロー、会計業務までスーパーマンのような活躍が求められる。あまりの激務に疲れ果て、教諭への降任を願い出るケースが後を絶たない。

 ▼中学、高校の教諭にとっては、部活動の顧問の仕事が大きな負担となっている。日中は授業をこなし、放課後は部活の指導に当たる。となれば、テストの採点や翌日の授業の準備に取り掛かるのは、生徒が下校してからになる。土日には試合や大会がある。活動日を減らすと、文句を言ってくる保護者もいるらしい。ゴールデンウイークを返上せざるを得ない先生も、少なくないだろう。

 ▼学園ドラマに出てくるような、「熱血先生」の情熱に頼り切る学校運営は、そろそろ限界に来ている。

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