産経ニュース

【新聞に喝!】鉄道自殺の報道に思う 元東京大学史料編纂所教授・酒井信彦

ニュース コラム

記事詳細

更新

【新聞に喝!】
鉄道自殺の報道に思う 元東京大学史料編纂所教授・酒井信彦

 3月5日の夜、東急東横線の祐天寺駅(東京都目黒区)で、中学2年の男子生徒が電車にはねられて死亡した。私が目にした範囲では、朝日新聞の6日の夕刊と産経新聞の7日の朝刊に小さな記事が載っている。防犯カメラの映像から、少年はホームから飛び込んだようで、警察は自殺であると判断しているという。

 鉄道自殺の記事が新聞に載るのは、実はきわめて珍しい。この記事には「人身事故」という言葉が使われていないが、ふつうは「人身事故」と表現されるだけで、自殺である“事実”は隠されているようだ。しかも新聞の本紙には載らず、新聞の電子版の方には数多く出てくる。

 それは毎日のように起きており、何月何日の何時ごろに、何線の何駅で人身事故が発生し、何時ごろ復旧したが、何人の乗客に影響を与えた-ときわめて簡略に書かれている。どんな人間であるかは全く説明されない。つまり、徹底的に電車の遅延問題として扱われるわけである。

 一方、誤って人間がホームから線路へ転落する事故がある。転落自体は数多くあるらしいが、運悪く亡くなる場合はまれである。最近では、1月14日にJR京浜東北線蕨駅(埼玉県蕨市)で、視覚障害の男性が盲導犬を連れていたにもかかわらず、線路へ転落して亡くなった。この事故は新聞でも大きく報道された結果、多くの駅でホームドアの前倒しの設置が決まったという。

続きを読む

「ニュース」のランキング