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【産経抄】沈黙の煉獄に囚われている人々を救い続けて… 3月18日

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【産経抄】
沈黙の煉獄に囚われている人々を救い続けて… 3月18日

 その女性は、長年閉じ込められていた静かで孤独な場所を、天国でも地獄でもなく、天国に入る前に浄化の苦しみを受ける煉獄(れんごく)と呼んだ。生後すぐに脳に酸素が届かない状態となり、脳に重度の障害を負って、体を動かすことも口をきくこともできなくなった溝呂木(みぞろぎ)梨穂さん(24)である。

 ▼母の真理さんは、梨穂さんには意思も言葉もあると信じていたが、医師は懐疑的で、梨穂さんもそれを伝えることも証明することもできなかった。19歳と10カ月の時に、重度障害者から言葉を引き出すことをライフワークにしている国学院大人間開発学部の柴田保之教授と出会うまでは。

 ▼手のひらで柴田教授にかすかな合図を送り、それを専用ソフトを使ったパソコン画面に反映させることで、心の中にため続けていた言葉が一気にあふれ出した。「何もできない私ですが、ぼんやりと生きてきたわけではありません。ずっと、私は人間とは何なのかということを、考えてきました」。

 ▼梨穂さんの新著『約束の大地』(青林堂)に収められた梨穂さんの詩を読むと、喜びも苦痛も、語りたいことも何一つ表現できず、理解されることもない閉じた世界の中で、梨穂さんがささやかな楽しみを見いだしながら、思索を深めていったことがうかがえる。

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