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【産経抄】名建築の不思議な力 3月13日

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【産経抄】
名建築の不思議な力 3月13日

 「鹿児島へ演奏旅行に行くよ」。ジャズピアニストの山下洋輔さんが母親に告げると、思いがけない言葉が返ってきた。「おじいさんの建てた刑務所を見てきなさい」。昭和61年のことだ。

 ▼山下さんは祖父、啓次郎について調べ始めた。明治時代になって、政府は欧米諸国から近代的な監獄の整備を求められていた。旧司法省の技官だった啓次郎は、欧米の刑務所約30カ所を10カ月かけて視察し、その成果をもとに、長崎、鹿児島、千葉、奈良、金沢の5カ所の監獄を設計した。

 ▼20世紀初頭に建てられたいわゆる「明治五大監獄」は、鹿児島を含めて次々に取り壊された。ほぼ完全な形で残っているのは、奈良監獄を受け継ぐ奈良少年刑務所だけである。

 ▼刑務所としてまもなく閉鎖されるのを前に、山下さんは先週末、刑務所の中庭で周辺住民を招いた記念コンサートを行った。中世ヨーロッパの城を思わせる赤レンガ造りの建物をなんとか残そうと、山下さんたちは、保存運動を続けてきた。その甲斐(かい)あって国の重要文化財への指定が決まり、ホテルなどへの再利用が検討されている。

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