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【日曜に書く】神戸から東北へ…ある本の旅 論説委員・河村直哉

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【日曜に書く】
神戸から東北へ…ある本の旅 論説委員・河村直哉

 平成7年の阪神大震災の際、被災者の心の問題と格闘する精神科医たちがいた。

 具体的な方法もあまり知られていない状態で、医師たちは模索しながらがれきの中を歩み、被災地の膨大な心の傷つきに向き合っていった。

 不屈の精神があった。

◆形成された「心のケア」

 その中心にいた若い医師と、筆者は面識があった。

 阪神大震災で広く知られることになる心的外傷(トラウマ)に関して、彼は先行的に研究していた。大災害が被災者の精神に与える影響について、震災の発生直後から、直感的に理解していた。

 けれども、万事が手探りだった。神戸で自らも被災していながら、彼は避難所を訪問し、遺族の集いに出席した。なすべきことを自問し続けた。

 1人になればときに放心し、涙を浮かべた。

 被災者の傍らにたたずみ、まず話に耳を傾けていくという方法が、できあがっていった。阪神大震災をきっかけにしきりと語られるようになった「心のケア」は、このようにして築かれたものである。

 体験として得られたものだったから、ケアがブームのように語られたり、技術の問題としてのみ扱われたりすることに、彼は懐疑的だった。原点にあったのは、被災者のそばに立ち、思いやるという姿勢だった。

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