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【産経抄】人生は受け身 2月24日

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【産経抄】
人生は受け身 2月24日

 93歳の大往生を遂げた映画監督の鈴木清順さんは、東京下町の商家に生まれた。「リンゴが腹いっぱい食えそうだ」。食料不足が深刻になった昭和18年、旧制弘前高校に進学したきっかけは、同級生の一言である。

 ▼ところが入学してまもなく徴兵される。輸送船で下関からフィリピンに向かう途中、米軍の魚雷攻撃を受けて、投げ出された。ふんどし一つで漂流し、6時間後に救助された。同期73人中生存者はわずか27人である。

 ▼「清順美学」と称賛される作品は、どこか「虚無」のイメージがつきまとう。江戸っ子気質(かたぎ)と生まれ育った大正という時代、そして戦争体験が染みついているからではないか。後に語っている。

 ▼復員してから映画の学校に通ったのも、高校の同級生の導きだった。晴れて映画監督になったものの道のりは平坦(へいたん)ではない。「わからない映画をつくりすぎる」。社長の逆鱗(げきりん)に触れ、13年間で40本もの映画を撮った日活を追われる。もっとも鈴木さんは慌てない。どうせタナボタ、受け身の人生と開き直っていたら、やはりチャンスがやってきた。

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