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【産経抄】「スマホに気を取られた」 もう二度と聞きたくない 2月12日

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【産経抄】
「スマホに気を取られた」 もう二度と聞きたくない 2月12日

 子連れの母牛が日暮れどきに草をはんでいた。見張りの牧童は、牛の親子を牛舎へ戻さず帰ったらしい。そこへ子牛を狙うオオカミが現れた。母牛は頭突きを食らわせ、切り立つ崖に敵の横っ腹を押しつけた。

 ▼『今昔物語集』の説話にある。放すまい。母牛は夜を徹して念じた。「放ちつる物ならば、我れは咋(く)ひ殺されなむず」。飼い主が翌朝に見たのは、息絶えたオオカミをなおも押さえ続ける母牛だった。わが子を守る悲壮な覚悟は、ときに鬼神の強さを母親に授ける。

 ▼この母親も守り抜いたのだろう。暴走トラックが車2台と歩道の母子を巻き添えにした、埼玉県草加市の死傷事故である。逮捕された運転手(28)はブレーキを踏まずに赤信号の交差点に進入した。手をつないでいた親子だが、母は亡くなり、息子が助かっている。

 ▼「鉄の塊が突っ込んできて守れたのだから、母のかがみだ」。通夜の席で夫は語っている。事故の翌日に息子は2歳の誕生日を迎え、母は育児休暇を終え職場復帰する予定だった。母の背に子が学ぶ、人生の哀歓苦楽もあったろう。その時間さえ奪った事故である。

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