産経ニュース

【産経抄】人間が負けるに決まっている 2月8日

ニュース コラム

記事詳細

更新

【産経抄】
人間が負けるに決まっている 2月8日

 史上最強の名人と呼ばれた大山康晴十五世名人は、昭和51年から12年間、日本将棋連盟会長を務めている。関西将棋会館の建設が懸案だった。大山さんは対局中でも、相手が長考に入るとすぐに席をはずし、カンパ用の色紙を書いたり、資金集めの会議を開いたりしたものだ。

 ▼連盟の新会長に決まった佐藤康光九段をとりまく状況は、30年前とまったく違う。コンピューターソフトの不正使用疑惑をめぐる騒動の責任を取って辞職した谷川浩司前会長は、心身共に限界の状態だという。

 ▼不正の疑いをかけられた三浦弘行九段については、証拠がなかったと判明している。名誉回復が何より急務である。疑惑を指摘した棋士との間のわだかまりがとけるまで紆余(うよ)曲折がありそうだ。「1秒間に1億と3手読む男」の称号を持つ佐藤九段でも、妙手は見つかりそうにない。まずは、大山さんが色紙に好んで書いたという「忍」の一手である。

 ▼将棋とコンピューターの対決が最初に脚光を浴びたのが、渡辺明竜王と「ボナンザ」だった。実は当時の米長邦雄会長が最初に対局を持ちかけたのは、佐藤九段だった。「遊びで指してくれ」。将棋は伝統文化、との意識が強い佐藤九段は、血相を変えた。「プロが将棋を指すのに“遊び”ということがありますか」。米長さんは正座して聞いているしかなかったそうだ。

 ▼渡辺竜王はなんとかボナンザを破った。もっともその後の飛躍的な実力の向上が、今回の騒動につながった。佐藤九段とコンピューターとの間には、皮肉な巡り合わせがある。

 ▼プロがいつか負ける日が来るのか。かつて棋士の間で意見が分かれていた。大山さんは「人間が負けるに決まってるじゃないか」と予言していたという。

「ニュース」のランキング