産経ニュース

【東京特派員】盛り場といえば…やはり「東は千住でしょ」 湯浅博 

ニュース コラム

記事詳細

更新

【東京特派員】
盛り場といえば…やはり「東は千住でしょ」 湯浅博 

 北千住通いは、連載が終わった「独立不羈(ふき)」の主人公、河合栄治郎の生家があったからだ。旧日光街道沿いに栄治郎が生まれた酒の卸と小売りの「徳島屋」があり、同じ敷地には、分家が営む河合醸造所があった。

 ちょうど徳島屋と背中合わせだったのが、森鴎外の父が開業した「橘井堂(きっせいどう)医院」である。鴎外の妹、小金井喜美子は『鴎外の思い出』に、徳島屋と界隈(かいわい)の雰囲気を次のように伝えている。

 「昼は静かなのですが、夜になると遠くもない青楼の裏二階に明かりがついて、芸者でも上がると賑やかな三味線や太鼓の音が、黒塀で囲まれた平屋の奥へ聞こえて来ます」

 のちに徳島屋の敷地にスーパー「トポス」ができ、橘井堂の跡地は「都税事務所」になった。だが、世の流れは速い。まもなく、都市再開発とかで双方合わせた土地に、30階建ての突出して高いビルができる。

 千住の宿にも、新しい波が押し寄せてきた。旧日光街道に残る宿場の江戸風情に、東京芸大や東京電機大がやってきて、おしゃれな雰囲気が加わった。しかし、街道沿いに30階とは、鴎外も栄治郎も目を丸くしていよう。

 「なんだかなぁ」とため息つくうちにひらめいた。日が暮れる前に、町内の銭湯でひと風呂浴びて帰ろ。案内所「街の駅」でもらった外国人向け地図には、英語で銭湯の位置が書きこまれている。

続きを読む

「ニュース」のランキング