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【一筆多論】問われるのは棋士の矜持 森田景史

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【一筆多論】
問われるのは棋士の矜持 森田景史

 プロ棋士の指す将棋に意味はあるのか-。

 「名人」の称号を初代大橋宗桂が名乗ったのは1612(慶長17)年だった。将棋ソフト開発の歴史は約40年しかない。人が400年余りかけた棋理の蓄積を、人工知能(AI)は10倍以上の駆け足でものにしたことになる。「ソフトはプロを超えた」ともいわれる時勢にあって、冒頭の問い掛けは重く響く。

 日本将棋連盟が昨秋、パソコンやスマートフォンなど電子機器の持ち込み禁止を決めたとき、筆者は「不毛な規定」とコラムに書いた。中盤や終盤の切所で、「次の一手」を将棋ソフトに求める懸念は前からあった。さりとて、ソフト頼みは棋士の自己否定に等しい。指は盤上の駒に伸ばすもの。電子機器の画面をなぞるはずがない、と。

 今にして思えば、「もっと早くに規制しておくべきだった」と書くのが正着だったのだろう。その後、トップ棋士の一人に不正使用疑惑が持ち上がり、異例の出場停止となっている。あらぬ疑いから棋士を守るためにも、誘惑の芽を摘んでおいた方がよかった。

 第三者調査委員会による「不正使用の疑いなし」の結論も、谷川浩司連盟会長の引責辞任も、疑われた棋士の汚名をそそぐ護符にはなるまい。同時に高額な対局料をかけてプロが指す意味は何か-という、疑念がますます膨らんでいる。

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