産経ニュース

【正論】市場の巨大化が蝕む国家の紐帯 不可欠なのは国際協調と連携だ 評論家・山崎正和

ニュース コラム

記事詳細

更新

【正論】
市場の巨大化が蝕む国家の紐帯 不可欠なのは国際協調と連携だ 評論家・山崎正和

山崎正和氏 山崎正和氏

 国家がそれだけの機能を持つには長い時間がかかり、任意に国家を造るのが容易ではないのは明白だろう。遠藤乾氏の近著『欧州複合危機』を読むと、EUが通貨統合と国境撤廃まで果たしながら、欧州議会を強化してEUを真の一国にしようとすると、その度に失敗してきたことがわかる。国家が習慣の蓄積の産物である以上それが当然であり、欧州にはもっと辛抱が必要だということだろう。

 また現代には民主主義国家というものが生まれ、そこでは、原理的に国民が国家の主人であって、国籍さえあればだれでも自分の国家の運営に意思表示ができる。この民主国家を造るのに人類は長い時間をかけたのだが、それができたのも国家が習慣の蓄積であることの格好の証拠だろう。習慣とは一定の同一性を保ちながら、時間をかければ生き物のように柔軟に変わるものなのである。

 ≪一国ナショナリズムは誤りだ≫

 その意味で、現代国家は人類にとっていわば天与の宝なのであるが、昨今、その力が企業によって脅かされているのが問題なのである。実は古くは企業も人間の共同体であり、人に帰属感を与え教育や福祉を助ける組織だった。職人気質(かたぎ)で結ばれた人間臭い集団だったのだが、地球規模化と技術革新によって激しく変質した。労働者自体も顔の見えない生産手段と化し、それが彼らを怒らせている。

続きを読む

「ニュース」のランキング