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【正論】市場の巨大化が蝕む国家の紐帯 不可欠なのは国際協調と連携だ 評論家・山崎正和

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【正論】
市場の巨大化が蝕む国家の紐帯 不可欠なのは国際協調と連携だ 評論家・山崎正和

山崎正和氏 山崎正和氏

 ≪利益の極大化が最大の目的≫

 昨年、2つの一国主義的な大事件が起こった。いうまでもなく、1つは英国の欧州連合(EU)離脱であり、もう1つは米国大統領選挙でのトランプ候補の当選である。どちらも露骨に自国一国の利益を優先し、孤立を目指そうとする勢力の勝利であった。

 もちろん両国の選択は賢明ではなく、その愚かさに気づいている人は両国の内部にも多い。現代世界では経済でも防衛でも、友好国の相互依存の網目は緊密にできあがっていて、それを破れば大国でもしっぺ返しを受けるのは自明だからである。現に英国の離脱交渉は遅々として進まないし、トランプ大統領は就任前から反対のデモを受けている。

 にもかかわらず、この愚かな選択の遠い背景に、愚かさを招くような巨大な文明上の問題が存在するのは、事実である。一言でいえば、急速に進む地球規模の市場経済と、長い伝統を持つ国民国家の対立である。国民国家も相互協力の絆で結ばれてきたが、昨今の市場は協力ではなくて融合を求め、国家の存立を脅かすような破壊力を見せている。

 じっさい現代の巨大企業は中小国家の予算を超える資金を持ち、安い労働力と低い法人税を求めて、世界中に生産拠点を展開する力を備えている。その目的は自己の利益の極大化だけであって、そのためなら国家の利益を損ね、その規制力を弱めることもあえて辞さない。それは個人としての企業人が公徳心を持つかどうかと関係なく、企業という組織に構造的に宿命づけられた性格である。

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