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【正論】未来の名のもとに新奇を追い過ぎていないか 日本人の精神打つ「主題」を奏でよ 文芸批評家・都留文科大学教授・新保祐司

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【正論】
未来の名のもとに新奇を追い過ぎていないか 日本人の精神打つ「主題」を奏でよ 文芸批評家・都留文科大学教授・新保祐司

文芸批評家 都留文科大学教授・新保祐司氏 文芸批評家 都留文科大学教授・新保祐司氏

 晩秋の昼下がり、公園の小径(こみち)を美しい紅葉を眺めながら散策していると、ふと、ブラームスが聴きたいなあという思いが心の底から湧き上がってきた。やはり、ブラームスは秋の作曲家である。人生の秋に差し掛かって、ますますその音楽が心に染み入るようになった。ブラームスの晩年の有名な「間奏曲集」を聴いていたとき、芭蕉(ばしょう)の「この道を行人(ゆくひと)なしに秋の暮」という俳句を思い出したことがある。

≪圧倒されたブラームスの変奏曲≫

 ブラームスは変奏曲の大家であった。「ヘンデルの主題による変奏曲」や「ハイドンの主題による変奏曲」が有名だが、私は前者を愛聴した。これはヘンデルのハープシコード組曲第2巻の第1曲の第2楽章、アリアと変奏の、そのアリアの部分を主題としている。ヘンデル自身は変奏曲を5曲しか書いていないが、ブラームスは25曲もの変奏曲を作り、最後を重厚壮大なフーガで締めくくった。

 この30分ほどの曲を聴くと、軽やかな主題が、変奏のたびにさまざまに表情を変えていくのに圧倒される。素朴に感じられただけの主題から、これほどの力強い、また荘重な音楽が引き出されてくるのは驚異である。

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