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【論壇時評10月号】敗者の口から飛び出すリベラル衰退と陰謀論 都知事選が終わって… 文化部・磨井慎吾

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【論壇時評10月号】
敗者の口から飛び出すリベラル衰退と陰謀論 都知事選が終わって… 文化部・磨井慎吾

東京都知事選で落選が決まり、支援者らに頭を下げる鳥越俊太郎氏=7月31日夜(東京都港区) 東京都知事選で落選が決まり、支援者らに頭を下げる鳥越俊太郎氏=7月31日夜(東京都港区)

 宇都宮は都知事選について「安倍政権に一矢を報いるという考え方が前面に出た選挙戦でした。しかし、都民から見ると、それじゃあたまらないわけです。やっぱり毎日の生活や暮らしをどうしてくれるのだという気持ちになってしまう」と、具体的政策課題を軽視して護憲や安保などに偏重した野党の方針を批判している。

 日本のリベラルが負け続けるのは、現状認識と処方箋がともに狂っているからではないか。都知事選とは全く異なる題材ながら、くしくも相通じる診断に至った出色ルポが、高橋篤史「改憲推進『日本会議』本当の実力」(文芸春秋)だ。

 「日本最大の右派組織」と呼ばれる同組織については、出版界の一部で現在“日本会議本”ブームが起きており、「日本会議こそが安倍政権を背後で操る巨大な黒幕組織であるとのイメージが世の中で流布しつつある。とりわけそれを受け入れているのがリベラル派の人々だ」と高橋は説く。だが実際の日本会議を調べると金も集票力もなければ政治家への影響力も乏しく、政権を動かすにはほど遠い実態ばかりが浮かび上がる。結局、日本会議の運動によって政権や社会が「右傾化」したのではなく、冷戦終結や中国の台頭などで「左右対立の軸が大きく右に移動した結果、たまたまそこに居たのが日本会議だったというのが物事の正確な理解」として、因果関係を逆転させた陰謀論だと高橋は結論づける。

 実態不明な敵の脅威を言いつのって危機感をあおれば、党派を同じくする身内で小さくまとまることは可能だろう。だが、広い層を納得させる現実的な政策提案からはかけ離れてしまう。「リベラル陣営が現実対応力を欠き自らを再構築しえないまま、まるで不可抗力であるかのように日本会議陰謀論を信じ込みただ怯(おび)えているのなら、それは日本の政治状況にとって不幸以外の何者でもない」という高橋の指摘は重い。=敬称略

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