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【正論】もともと日本に存在しなかった「個人主義」の呪縛から脱出せよ 拓殖大学学事顧問・渡辺利夫

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【正論】
もともと日本に存在しなかった「個人主義」の呪縛から脱出せよ 拓殖大学学事顧問・渡辺利夫

 いま社会といったが、これも後世の造語だという。今日使われているようなソサイエティ(society)の訳語である「社会」に対応する現実は往時の日本にはなかった。存在したのは家とか藩とか邦といった集団における身分であった。個人を構成単位とする人間関係を社会だとする考えは、柳父氏によれば、むしろこの訳語が成立して以降のことらしい。

 個人についていえば、福澤がまずは「人」、次いで「独一個人」と訳し、その後、独が落ちて「一個人」、さらに一が落ちて「個人」になったと柳父氏は追跡する。また社会については、中村正直が同じ目的をもった人々の集まりという意味をこめて「会社」と訳したという。実際、福澤、中村ら当時の代表的知識人が集った西洋思想啓蒙(けいもう)の場が明六「社」であった。そういう社の集まりが「会」であり、社会となったというのが柳父氏の究明である。

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