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【産経抄】副作用は国家の滅亡 4月28日

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【産経抄】
副作用は国家の滅亡 4月28日

 昔の中国の皇帝にとって何よりの願いは、「不老不死」だった。秦の始皇帝は、徐福に妙薬探しの旅を命じた。しかし、徐福は帰らず、始皇帝は49歳で世を去った。

 ▼唐の時代になると、病を引き起こす悪霊に打ち勝つ妙薬として、丹薬がもてはやされた。その正体は、毒性の強い水銀化合物だった。20代の皇帝のうち少なくとも6人が、中毒死とみられている。

 ▼2年前から発売されているがん治療薬「オプジーボ」は、間違いなく妙薬である。当初は、皮膚がん向けだったが、昨年末から日本人に多い非小細胞肺がんの治療にも使われている。これまでの抗がん剤とは、まったく違う仕組みだ。患者自身の免疫に働きかけて、がん細胞を消してしまう。全員とはいかないが、一部の患者には著しい効果があるという。

 ▼問題は、体重60キロの人が1年使うとして、3500万円にも達する薬価である。患者本人の負担は補填(ほてん)され、ほとんどが公費で賄われる。仮に5万人の患者に使ったとすると、日本の年間医療費のなかで約10兆円とされる薬剤費が2割近く跳ね上がる計算だ。専門家は、「このままでは国が滅びかねない」と指摘する。確かに、「副作用」は強烈すぎる。

 ▼しかも、がんを制圧するかもしれない高価な「夢の新薬」は、これからも続々と登場する。それどころか、英国の科学者、オーブリー・デグレイ氏らは、老化そのものを止める治療法を提唱している。平均年齢1000歳をめざすという、途方もない研究である。

 ▼昔の中国のように、「不老不死」を願う資格があるのは、皇帝だけではない。誰もが追い求める時代がやってくるかもしれない。実現したとしても、「ユートピア」と呼べる世界にはなりそうにない。

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