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【産経抄】避難所になった刑務所 4月20日

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【産経抄】
避難所になった刑務所 4月20日

 大地震に見舞われた南米エクアドルでは、刑務所から約100人の受刑者が脱走したという。大正12年の関東大震災によって、東京の刑務所ではレンガ塀などが倒壊したものの、脱獄者は出なかった。むしろ被害が甚大だったのは、横浜刑務所である。

 ▼現在の所長にあたる典獄は、千人近い囚人を24時間に限って解放する決断を下す。出頭が遅れた者を含めれば、最終的に全員が帰還していた。元刑務官の作家、坂本敏夫さんは、近著『典獄と934人のメロス』(講談社)のなかで、奇跡のような事実を明らかにしている。

 ▼熊本市内にある熊本刑務所は、14日からの熊本地震の被害を免れている。受刑者の混乱もなかった。法務省によると、職員用の武道場などを開放して、近隣住民を受け入れている。刑務所が災害時に住民の避難場所になるのは、初めての試みらしい。他の刑務所からも、食料や飲料水などの物資が集まっている。

 ▼自宅を失った被災者の多くが、余震の不安におびえながら、避難所で窮屈な生活を余儀なくされている。たとえ損壊の程度が軽くても、不気味な余震が続くかぎり、家に戻るわけにはいかない。学校の施設に避難していた人たちは、授業の再開にともなって退去を迫られるケースも出てきた。

 ▼やむなくマイカーに寝泊まりする「車中泊」を選ぶ人も多い。狭い空間で長時間同じような姿勢を続けていると、血流が悪くなって血栓ができ、呼吸困難に陥る恐れがある。いわゆるエコノミークラス症候群の問題も深刻化している。とうとう死者が出てしまった。

 ▼被災者のストレスを少しでも軽くできるアイデアがあれば、前例にとらわれることなく、採用してほしい。熊本刑務所が、いいお手本である。

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