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【産経抄】春隣る雨氷上をながれけり(石原舟月) 2月1日

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【産経抄】
春隣る雨氷上をながれけり(石原舟月) 2月1日

 水は0度以下になると氷になる。しかし、温度がゆっくり下がっていくと、氷点下でもある程度まで液体のままでいられる。このような「過冷却」と呼ばれる状態になった雨のしずくが、何かにぶつかるなど刺激を受けた瞬間に、凍り付く。

 ▼この現象が「雨氷(うひょう)」である。大正4(1915)年から、気象用語として使われている。雨水の代わりに霧が凍ると、霧氷(むひょう)となる。長野県各地では先週末、倒木があいついだ。道路をふさがれたために、温泉やホテルの宿泊客ら300人以上が、孤立する災難に見舞われた。どうやら原因は、雨氷だったようだ。

 ▼日本の南側を低気圧が通った影響で、長野県内では雪や雨が降り続いていた。みぞれが樹木にまとわり付いて雨氷となり、その重みに耐えきれず、倒れた可能性が高い。

 ▼雨氷は過去にも、鉄道の架線に張り付き、運転ができなくなるトラブルも引き起こしている。やっかいな現象ではあるが、独特の美しい光景も作り出してくれる。白く見える霧氷に対して、雨氷は透明度が高い。日の光が当たると、きらきら輝いてまるで氷の花が咲いたようになるという。

 ▼花といえば、古今和歌集に、雪を花に見立てたこんな歌がある。「冬ながら春のとなりの近ければ中垣よりぞ花は散りける」。まだ冬ではあるが、春は隣といっていいほどの近さにある。冬と春を隔てる中垣を越えて、風にあおられてくる雪は、花が散っているようにみえる。清少納言の曽祖父にあたる清原深養父(ふかやぶ)が、立春の前日に詠んだ。

 ▼晩冬の今頃の季節をあらわし、季語にもなっている「春隣」は、この歌から生まれている。「春隣る雨氷上(ひょうじょう)をながれけり」(石原舟月(しゅうげつ))。暦の上では、春はすぐそばまで来ているのだが。

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