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【オリンピズム】64年東京のいまを歩く(2)あるスポーツ写真家の原点 選手の人柄や生活に触れる

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【オリンピズム】
64年東京のいまを歩く(2)あるスポーツ写真家の原点 選手の人柄や生活に触れる

 岸本健には信念がある。

 「勝った負けたでなく、選手がどれほど努力をしているのか、普段どんな生活をしているか、記録として残すのがスポーツ写真」

 カメラマンを志し、北海道の遠軽町から上京した岸本が初めて迎えた大舞台が1964年東京オリンピックだった。26歳である。

自ら撮影した写真を取り込んだ1964年選手村ニュースをみる岸本健さん(東京・渋谷区のフォート・キシモト、オフィスで)

自ら撮影した写真を取り込んだ1964年選手村ニュースをみる岸本健さん(東京・渋谷区のフォート・キシモト、オフィスで)

 当時珍しかったフリーランス、それもスポーツ専門カメラマン。岸本は大会前に面白いことに気づいた。新聞社や通信社のカメラマンは普段の練習に姿は見せない。彼らが必要なのは試合の勝敗を伝える写真。ならば自分は徹底して選手を追おう。写真を撮り話し込む。人柄や生活にまで触れる。葛藤を知り、吸う息吐く息すらわかってきた。

 東京大会体操で個人総合優勝する遠藤幸雄が珍しく鉄棒の大車輪の練習中、真っ逆さまに落下した。岸本は一瞬、撮り逃したと思った。だが、指が呼吸を覚えていた。本気で練習を撮り続けた“勲章”だった。

 オリンピック期間中、岸本は競技撮影のかたわら選手村にも足しげく通った。組織委員会から依頼された日刊『選手村ニュース』のための写真撮影。柔道のアントン・ヘーシンクの理髪風景や体操の小野喬、清子夫妻が仲良くベンチで話し込むショットなど、岸本らしい記録が残された。

 この大イベントの全容を収めるため、写真学校の学生アルバイトを含めた大量のカメラマンを動員し、カバーするシステムを構築した。これが2年後のフォトエージェンシー「フォート・キシモト」創業に結実する。まさに原点である。

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