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【日曜に書く】さまざまな桜を思い出す 論説委員・鹿間孝一 

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【日曜に書く】
さまざまな桜を思い出す 論説委員・鹿間孝一 

 漂泊の俳人、種田山頭火に次の句がある。

 「さくら咲いて、なるほど日本の春で」

 旅の日記にこう記している。

 「日本の春だ、日本人の歓喜だ。過去をして過去を葬らしめよ、昨日は昨日、明日は明日、今日は今日の生命を呼吸せよ。小鳥のやうに、あゝ小鳥のやうにうたへ、そしてをどれ」

 妻子を捨て、出家して放浪する孤独な旅人が春を待ちわびるのはわかるが、このはしゃぎぶりは尋常ではない。満開の桜に高揚したのだろうか。

 ◆門出の季節に

 今年の桜前線は例年になく急ぎ足である。大阪では開花したと思ったらすぐに満開になった。「春に三日の晴れなし」というが、雨続きで、早くお花見をしないと散ってしまうのでは、と気忙(きぜわ)しい。

 「学校も 役場も お寺も さいたさいた」

 これも山頭火の句。

 小学校の校門の脇には、申し合わせたように桜の木がある。演出家で作家の久世光彦さんは「私は、あれがないと入学式が絵にならないからだと思っている」と言った。

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