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【平成30年史 変容する犯罪(3)】電話1本…ヤミ金撲滅が生んだ「オレオレ」 挫折エリートが詐欺を効率化 アジトには水溶液入りバケツ

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【平成30年史 変容する犯罪(3)】
電話1本…ヤミ金撲滅が生んだ「オレオレ」 挫折エリートが詐欺を効率化 アジトには水溶液入りバケツ

特殊詐欺の被害額の推移 特殊詐欺の被害額の推移

 「集められたのは、20代から30代の若い捜査員。首都圏に集中する銀行や携帯電話会社との連携を取りやすくする目的もあった」

 警察庁幹部はこう語る。

 時を同じくして、詐欺の「ツール」として使われることが多かった他人名義や架空名義の銀行口座と携帯電話の不正利用を防止する法律も制定された。

 しかし、複数の業者を経由して利用者の特定が困難になったレンタル携帯やIP電話を利用するなど詐欺グループ側の手口も次第に巧妙化していく。詐欺グループが、詐取金を引き出す「出し子」や、詐欺電話をかける「掛け子」など、役割を細分化していったことも、捜査を困難にした。

 先の元捜査員は、「詐欺グループは分業制を敷き、互いの接触を最小限にすることで上位にまで捜査の手が及ばないようにしている。末端の者の捜査を足がかりに組織を一網打尽にする『突き上げ捜査』がやりにくい仕組みが作り上げられている」と唇をかんだ。

                ■ ■ ■

 高度にシステム化された詐欺の裾野は時を経るごとに広がっていった。

 犯罪に手を染めるのは、暴力団や「半グレ」などの組織的な犯罪集団ばかりではない。

 20年に警視庁などが摘発した事件が象徴的だ。

 詐欺グループのリーダーとして逮捕された男=当時(29)=は、仲間内から「キング」と呼ばれ、わずか2年半で1千人超から19億円を荒稼ぎした。

 男を頂点とする組織のメンバーには有名私大の学生や、難関高校の出身者らも交じっていた。

 別の詐欺グループを率いていた男は言う。

 「この世界に入ってくるやつはいい所までいって途中で挫折したやつが多い。表の社会では落ちこぼれたけれど地頭はいい連中だ。詐欺でもうけた金を元手に起業する者もいた」

 詐欺の手口は次第にマニュアル化され、複数のグループに共有されるようになっていった。マニュアルには、捜査の目を免れるためのノウハウも含まれる。

 先の元捜査員は、「詐欺電話をかける『掛け子』が集まるアジトには、水溶液が入ったバケツが用意されているケースが多かった。水溶性の紙に名簿を印字し、警察が踏み込んだときに即座に証拠隠滅するためだ」と振り返る。

 警視庁は知能犯を扱う捜査2課や、立てこもり事件などの捜査に当たる捜査1課特殊班(SIT)の捜査員らで構成された特別専従班を結成した。

 詐欺グループのアジトを摘発する際、迅速に容疑者を制圧して証拠隠滅を防ぐためだ。今年5月からは警察庁が主導し、詐欺に使用された電話番号に繰り返し架電し、「詐欺電話」を使用不能にするシステムの運用が始まった。

 「警察と詐欺グループとのいたちごっこになっている側面は否めない。それでも地道に捜査を進めていくしかない」

 元捜査員はこう言い切った。

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